2015年2月4日水曜日

書評:労働時間の経済分析

労働時間の経済分析 超高齢社会の働き方を展望する

日経・経済図書文化賞を受賞したということで買っておいて年末から「積ん読」になっていたのですが、面白いデータ分析がたくさんはいっており、大変興味深かったです。

このうちいくつかご紹介。


1980年代は中小企業の方が大企業より労働時間が長かったが、2000年代に入ってから両者の差はほとんどない。日本の平均労働時間は低下をしてきたが、これは短時間労働者の増加によるもので、フルタイム雇用者の労働時間はほとんど変わっていない。

残業代なし管理職と、残業代あり被管理職の報酬や労働時間を比較したところ、平時は労働時間や時間あたり賃金の差はほとんどない。ただし、景気後退期には管理職の労働時間が長くなり、時間単価が低下する可能性が指摘できる。

労働時間に関する弾性値は極めて低く、賃金が高くもらえるのであればより長く働こう、低いのであれば短縮しようというメカニズムはほとんど働かない。

日本人のフルタイム雇用者の労働時間は国際比較においても長く、「より減らしたい」と考えている労働者の割合も高いため、「働きすぎ」と言っても差し支えない。一方で、日本人はそもそも「希望する労働時間」が長い。特に、長時間労働が「評価」される企業では希望労働時間が長い。

ただし、日本人も欧米赴任で周囲の環境が変われば、労働時間は顕著に短くなり生産性も上昇する。したがって、国民性などではなく長時間労働は環境の問題と考えられる。(赴任者曰く 日本では資料の作成や上司に対する気配りが過大「社内会議資料のフォントや改行の長さなどの調整は付加価値につながらないのに上司へのサービスとして手厚く行う風習があった」)

長時間労働は、労働市場特性も影響する。勤続年数が長い企業は長時間残業となる傾向がある。企業の固定的投下資本が大きく、人員増減によって需要変動に対応することができないため、あらかじめ採用人数を絞り、残業させておく必要があるからである。


昨今「ブラック企業」「ホワイトカラーエグゼンプション」等のトピックスにより労働時間と報酬、従業員の健康に関する関心が高まっていますが、上記のデータを見る限り、賛成反対双方が不毛な議論をしているようにも思えてきます。

例えばホワイトカラーエグゼンプションにしても、労働側の「残業代なしタダ働き制度=長時間残業常態化」や、使用者側の「効率的な働き方の浸透=生産性向上」のどちらもあまり起こりそうにない話だと予想されます。

著者が言うように、事実の分析に基づいた、生産的な議論をしたいものです。

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