2014年3月16日日曜日

書評:現代日本の少年非行

Twitterで推奨されていて読んだ本。中々面白かったです。

現代日本の少年非行―その発生態様と関連要因に関する実証的研究

「2000年以降3度の少年法改正はいわゆる「厳罰化」の方向に向かっていますが…実際にはこれが何らかの問題解決につながるという根拠はほとんどない(鮎川2005)とされており」筆者はこれらの改正を典型的なポピュリズムであると断じています。

正しい政策判断には正しい現状認識が必要である、という問題意識に基づいて、丁寧に統計データを見ています。


■少年非行は悪化しているのか?

これはネット界隈ではよく言われることですが、データを見れば「非行の凶悪化はいかなる意味でも認められない」ということです。
  • 少年は全体で3グループに分けられ、非行なし群が全体の7-8割、低レベル非行群が全体の2-3割を占めていて、高レベル非行群は全体の1%程度。
  • 低レベル非行群は12~15歳で非行を行い、窃盗(自転車盗、万引き等)がほとんどで、1回の検挙で非行歴は終了する。
  • 高レベル非行群は概ね10歳が初犯年齢であり、3-4回検挙される。暴行や殺人などの重大な犯罪に関与する確立が高い。これらの1%の少年が、全ての非行の4分の1にかかわっている。

これらの傾向は年齢動向の多少の変化があれども、数十年間変わっていません。「非行対策においてもっとも注視すべきは非行を繰り返す一部の少年であり、彼らの再非行を減らすことができれば総量を大幅に減らすことができる」としています。


■普通の子が「キレル」のか?

2010年の公式統計では両親ありを比較対象としたときの検挙されるリスクは、「母のみ」で1.8-3.1倍、「父のみ」で2.5-3.6倍となります。10代の凶悪犯(殺人・強盗・放火・強姦)の約6割は非在学・中卒者が6割を占め、窃盗犯などの軽微な犯罪でも低学歴層の構成比が大きくなっています。

「非行は今日においてもなお、低階層出身の子供や、親の不在等の不遇な生活環境に置かれた子供に偏在しているのである。もちろん、このようなエビデンスは一歩間違えると差別や偏見を増幅することにつながるので、取扱には注意が必要であるしかしだからといって事実に目を背けてはこのような偏在状態が維持されるだけである。

「海外において実施され、効果のあることが裏付けられている、過程領域に関わる非行の予防・低減策は、日本においても効果的である可能性が出てくると考えられる。…何らかの働きかけにより、彼らの学校への適応度を高めることが、少年非行の抑制の為に効果的であるということを、本研究は示唆している」


以下の著者の結びは頷くところ大です。

「今日の日本社会には、犯罪・非行や逸脱行動に関わった人々に対して、彼らの自己責任を強調した上で、反省、制裁、排除を求める社会的圧力が、以前よりも高まっている。『被害者の視点を取り入れた教育』が重視されてきている(緑川 2004)…そのような対応は、彼らへの排除の圧力をさらに高め、問題をより深刻にしてしまう可能性がある

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