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2015年3月1日日曜日

大塚家具と家具業界

ご存知の通り、最近大塚家具の委任状闘争が盛り上がっております。


創業者の会長と長女の社長との間で、今後の経営体制を巡って対立が続いている家具販売大手「大塚家具」の大塚久美子社長は26日、都内で会見し、「会社が発展する段階で、どこかで創業者から離れなければならない」と述べ、創業者を外す形となっている次の経営体制案は妥当だと主張しました。(NHK:2月26日 18時20分)


単純な権力争いであれば、どうぞご随意にというところなのですが、ビジネス路線の違いということであれば、これは面白いと思いまして。軽くデスクトップリサーチをしてみました。

まずは大塚家具の長期業績から。


大塚家具はIRのHPで約20年にわたる詳細なデータを開示してくれていまして、この点は僕のような変人には大変ありがたい。さて、バブル直後に赤字に陥った大塚家具はその後急成長し、売上高では3倍以上、営業利益ベースで100億円に届こうかというレベルまで急成長します。この背景にいったい何があったのか?

最近公開されたこちらの東洋経済の記事によれば、大塚家具の躍進の理由は次のようにまとめられております。
  • 家具メーカーからの直接仕入れだったによるマージン削減。国内メーカーなら2~5割ほど安価になるし、輸入品なら半額になるケースも多い。 
  • 当時主流の「売れ残ったものは返品する」という委託販売方式から買い取り方式へ。
  • メーカー希望小売価格表示から実勢価格表示へ(同一品の業界最安値をアピール)。メーカーの反発を抑えるために勝久社長はお客の会員制度を導入。「会員限定で価格を示す」という苦肉の策。 
ここではこの分析が正しいとして、おそらくこの方式は国内メーカーから総スカンをくらい、成長のドライバになったのは輸入品だったのではないでしょうか。大塚家具の輸入品売上高構成比は成長期に合わせて急上昇します。


しかし、この順調な成長は2000年に入って急減速してしまいます。売上高は維持したものの、じわりじわりと営業利益を下げていき、リーマンショックの後に売り上げ高が急減したために、一気に利益が吹き飛んでしまいます。この背景には何があったのでしょうか?

まず、市場全体を見てみます。


これを見る限りにおいては、確かにリーマンショック後に最大2割程度落ち込んだものの、それだけでは大塚家具の急激な売り上げ減は説明できず、大塚家具は市場競争に負けてシェアを失っているのが売り上げ減の原因であると言えそうです。

家具メーカーで勢いのある企業といえば、ニトリとIKEAでしょう。この2社についてはググってみたら詳細に分析した論文(井村)が見つかりました。これによれば、ニトリとIKEA、どちらもSPAモデルで生産から販売まで一括管理し、デザインは本社で管理し、労務費の安い国で行うという合理的なサプライチェーンモデルを築いているということです。

こうした視点で見ると、大塚家具自身の分析として「まとめ買い需要の減少」をあげているのは、やや大丈夫かな、という気がします。
「家具市場は<住宅という箱の「備品」としてのインテリア>から<衣食とともに、「ライフスタイル」を構成する要素としてのインテリア>かつ<より自分らしいライフスタイルに向けて、少しずつ買い足すもの>に変遷」(大塚家具資料より)
僕なんかはシンプルに「デザイン性も悪く、価格も高い」と、商品力の問題として捉えたほうがよさそうに思います。なかなかそんなことは公式に自分たちの口では言えないことですが。

といっても、「今風デザインの家具の輸入を増やす」「ニトリやIKEAの真似をする」といった安易な方法論では勝つことはできないでしょう。ニトリにせよ、IKEAにしろ、デザイナーを育成し、海外で生産体制を整え、ロジスティクスを揃えるのはそう簡単にはいかなかったはずです。それこそ試行錯誤を繰り返し、10年単位の時間がかかって今の成功がある。

そういう意味では、勝久氏の他人のモノマネしてどうなるんだ。という、創業者社長の「原点」への強烈なこだわりも理解できるところです。

ちなみに、この間大塚家具は人員を1700名程度で維持しており、赤字になってもリストラを行わない、ある種の「良心的な企業」ということになるのでしょう。しかし、はっきりしていることは、現状のままでは現在の売り上げですら維持できず、従って雇用を維持することも、どこかの時点で不可能となります。

経営者は大変ですね。

2014年1月24日金曜日

携帯キャリアの収益構造

昨日のエントリーに絡んでタイムリーな記事が出てましたね。
スマホ、通話も定額制 ソフトバンクは月1280円で
ソフトバンクはスマートフォン(スマホ)の音声通話に4月から定額料金制を導入する。現在は時間に応じ料金が増える仕組みだが、定額のデータ通信料金と一本化する。主力の料金プランは月6980円で音声通話分は実質月1280円。
2014/1/24 2:01 (2014/1/24 2:00更新)日本経済新聞 電子版 
ソフトバンクだけでなく、ドコモのサイトをみても、平均通話時間の低下以上に、売上の下落は大きく、全ての携帯キャリアで音声通話の低料金化が進んでいることがわかります。

1契約当たり月間平均収入

1契約当たり月間平均通話時間

既にデータと音声通話の収入は逆転しております。もう2年ぐらい前から携帯電話キャリアにとっては通話サービスの方が「おまけ」の時代にはいってるんですね。

この手の値下げ競争はどこまで続くのか?古典的なミクロ経済のセオリーに従うならば、その答えは「業者の利潤がゼロになるまで」ということになります。もちろん、携帯電話会社としてはそうはさせじと、競合他社に先駆けてお客さんが「多少余分に払ってくれるサービス」を開発しなくてはならない。

個人的には、携帯電話会社はまだまだ儲かってるんだから、もっともっと値段を下げてほしいところであります。

2014年1月23日木曜日

プライシング

「実はスマホもってないんですよ…」というと、原始人のような扱いを受ける今日この頃。スマホを持っていないのは、第一に今は外回りがほとんどないので、使う機会がないから。第二に通信代が高いから。

僕からすると約1万円/月、つまり12万円/年は高いと感じますし、携帯キャリアが巨額の利益を計上しているのも釈然としないのですが、何に価値を置くかは人それぞれというものでしょう。


ですが、最近ふとテレビをみていたら、NTTコムのOCNがMVNOの宣伝をやっていまして、「通信料980円/月って…超安いじゃん!」と目を引きました。MVNOはキャリアから業者が回線を借りて、安く売りさばくサービスです。

そもそも、何故携帯キャリアはこのようなサービスを「許す」のでしょうか?もし携帯ユーザーの大部分が僕のように考えてそっちのプランに切り替えてしまえば、携帯キャリアの利益は吹き飛んでしまいます。

このような価格戦略が成り立つのは「利用層が明確に分かれている」時です。つまり、MVNOを使うようなユーザーは、そもそも通常の契約を結ばない少数のオタクである(と携帯キャリアはみなしてる)。であれば、回線の余力分をばら売りした方が良い、というソロバン勘定でしょう。

ですが、CMというのは究極にマス向けの媒体です。このようなチャネルでキャンペーンが成り立つと言うことは、かなり「スマホに高いお金を払うのはバカらしい」というユーザーが増えているのではないでしょうか?実際、LINEも普及してますし、皆さん音声通話って使いますかね?

こうなると、携帯キャリアの利益を「浸食する」という現象が始まりかねません。実際に、NTTコムがやろうとしたときに親会社のNTTから圧力がかかったとか、なんだとか。

いずれにせよ安くなるのはユーザーにとっていいことです。個人的には1000円/月なら十分にAffordableということで、加入検討しております。

Googleのキャッシュ

先日シリコンバレーに旅行に行ってきました。何故シリコンバレーかと言えば、Googleの本社に転職した友人がいるので、オフィス見学がてら、ちょっと話を聞いて来ようという趣旨でございます。


ひとりのビジネスマンとしていつも気になるのは「Googleは膨大なお金をどうするんだろう?」ということ。Googleの昨年度の利益は127.6億ドル。つまり、約1兆3000億円に達します。しかも、グーグルは配当を支払っていないので、このほぼ全てが「投資資金」ということになります。

ある意味「無限のお金」がありますので、手当たり次第に会社を買っているように僕にはみえますし、グーグルグラスのようなR&Dにも湯水のようにお金をつぎ込めるわけであります。それでも使いきれずに、現在Googleの銀行口座には565.2億ドル。つまり、約5兆7000億円ものお金が眠っています。そして、これが毎日何十億円と増えていく。

とはいえ、冷静にみてみると、この財務諸表からは「その他新規事業」は一向に収益化できていないことが明らかであり、利益のほとんどは未だに広告から出ているわけです。

Googleはいつまでこのスタイルの経営を続けるのでしょうか?銀行口座に無限にお金を積み上げ続けることは不可能です。かつて、マイクロソフトやアップルも同様に配当を一切せずに、巨額の手元資金を積み上げました。しかし、最終的には配当や自社株買いで株主にお金を還元しました。

Googleがそうなるのは5年後か。10年後か。