2015年12月30日水曜日

待機児童の状況

うちの家庭は共働きです。となれば、当然のことながら今後数年間は「働いている間に子供を預かってくれるところ」が必要になります。


もちろん、そのために存在するのが保育園なのですが…周知のように保育園はニーズに対して圧倒的にキャパが足りません。2015年現在、厚労省によれば日本全国で約2万人の待機児童がいるとされています(リンク先PDF)。

ただ、この8年間で保育所のキャパが20万人分も増加したにもかかわらず、待機児童数は約2万人程度で変わっておりません。「待機児童が2万人だから、2万人キャパを増やせば良い」とはならず、潜在的にはこの数をはるかに上回る待機児童が存在すると言われております。




ちょっと古いデータですが、就学前児童の状況は以下の通りです。この図を見る限り、まだまだ需要はありそうです(出所:厚生労働省HP)。例えば、単純に1、2歳児の保育園利用率が倍になりうるとしたら、潜在的な待機児童数は約70万人いることになります。


「うちの施設は定員100人で、ただいまお待ちの方は500人です」と言われたら、多くの人が利用を断念するのではないでしょうか。これが現在の実態です。

保育園のキャパを増やすにはもちろん財源が必要です。正直、20年間一度も稼動してない「もんじゅ」とやらに1兆円ものお金を使うぐらいだったら、保育園整備に税金使ってればよかったのに…

ここまでは概論として多くの方がご存知だと思いますが、次はネットだけではわからない、実際の保育園探しの事情を。

2015年12月28日月曜日

子育て開始

遅まきながら、来年結婚し、かつ子供が生まれることになりました。なお、これは色んなところで言っておるのですが、でき婚ではありません。念のため。



妻には働き続けて欲しいと思っていますので、「保育園を探さなきゃなー」と漠然と考えていたのですが、いざ実際に情報収集をし始めると、これが予想通りというか、予想以上にシビアな状況のようです。

そもそもが、自治体HPの「情報」が大変にわかりにくい。

例えば、これだけ世の中で「待機児童」ということが問題になっているのですから、これから子供を持つ夫婦がまず知りたいのは「保育園に入れるのか、どれくらい難しいのか」ということではないでしょうか。

しかし、意図的なのか、そうでないのか、そのことに関しては品川区のサイトは沈黙しています(待機児童状況の表はありますが)。もちろん、こういうご時世ですので、いろんなサイトがあって、ブログ等での体験記もいっぱいあるのですが、「〜のようです」という伝聞情報ばかりなので、やはり運営元からの信頼できる情報を入手したい。

結局のところ、こんな時代なのに、自治体に電話して直接聞かないと本当に知りたいことはよく分からないのです。

私はもともと世代的にこの手の話に関心のある方だと思っていたのですが、それでもやはりやってみないとわからないことが多い。特に、情報収集一つとっても伝統的な「口コミ」に多くの人が頼っている状況はちょっとおかしいのではないでしょうか。

そもそも少子化は高齢化と対で、日本における最大の社会的イシューと言っても過言ではありません。こうした状況に対して、まずもって正確な情報発信がなされていないことに大きな問題があるなぁ、という認識を抱きました。

個人のブログでできることはたかが知れていますが、草の根の情報発信が多少なりとも子育てしやすい社会環境の醸成に役立てればということで、折に触れて情報発信したいと思います。

2015年12月24日木曜日

書評:新・犯罪論

Twitterでオススメされていた本で、期待にたがわず面白い本でした。専門知識がなくてもスラスラ読めます。


新・犯罪論 ―「犯罪減少社会」でこれからすべきこと

本書で強調されているのは、統計調査の特性と限界を正しく理解し、社会の実相をなるべく正確に理解すること。その上で、社会問題に対してどのような解決策がありうるのか、考えることとされています。

とりわけ一般的に「犯罪」に対する理解は驚くほど間違っていることが強調されています。以下サマリーです。

1 犯罪は減り続けている
このブログを訪問される方々にとっては半ば常識かもしれませんが、近年日本の犯罪は減り続けています。一つは年齢構成の影響で、世界中どこの国でも、犯罪は若年層が起こす確率が高く、したがって少子化により犯罪数は減っていきます。

さらに、年齢別に人口10万人あたりで見た犯罪発生率も、1970年代と比べて2005年は半分以下になっています。皮肉にも、日本で犯罪が最も多発していたのは、古き良き時代とされがちな「三丁目の夕日」や「隣のトトロ」の時代です。

なお、一方で内閣府の世論調査では約8割が「治安は悪化している」と答えており、このギャップはごく稀に起こる凶悪犯罪をセンセーショナルに報じるマスメディアあり方に問題があるのではないかと見られています。

2 犯罪を防ぐ方法
近年では監視カメラがいたるところに見られるようになりました。しかし、監視カメラは防犯という意味からはほとんど効果がないことがわかっています。他方、明確に防犯に効果があるのは、街灯設置です。プライバシーの問題を発生させることなく、コストも安いということであれば、どちらの予算を優先させるかは明らかではないでしょうか。

3 外国人犯罪の実態
大前提として、外国人犯罪者の構成比はとても小さく、全犯罪者のうちの約4%に過ぎません。さらにそのうちの大部分が、蛇頭などのブローカーに数百万の借金を背負い、雇用が不安定な底辺労働の末に困窮して窃盗や強盗の見張りを務めてしまう人々です。

4 受刑者の実態
「刑務所に入っていた」というと何やら恐ろしげなイメージがありますが、実態は約3割が窃盗でそのうち大部分は少額のもの、3割が覚せい剤依存症、約1割が無銭飲食や無賃乗車ということで、暴力犯罪者ではない。しかも、そのうち約25%がIQ70未満。万引きの高齢受刑者がどんどん増えているというのが実態です。

5 コストの問題
当たり前ですが、裁判や収監にもコストがかかります。スーパーで300円のパンを万引きした人が、勾留されて実刑になるまでに約130万円、刑務所に一年間入れば約300万円のコストがかかるとされています。


こうした基本的な情報の上に立ち、犯罪をさらに減らし、安心な社会を築くとすれば我々は何をなすべきでしょうか。少なくとも、厳罰化を推進し、こうした人々を排除、隔離し刑務所の収容期間を増やすことは、コストばかりがかかって、あまり意味がないように私には思われます。

綺麗事に聞こえるかもしれませんが、やはり福祉政策を充実させて、社会的弱者の人たちが包摂されるような社会をいかに築けるか、そうした方向性で議論することの方がよほど生産的なように、私には思われます。

2015年10月19日月曜日

マンション購入必読書?

ブログの方ではご無沙汰しております。やっぱり仕事でもないとなかなかまとまった文章って書く機会ないですね…本日は代休を取得しておりますので、ちょっと前から書こうと思っていたテーマをやっつけたいと思います。

あ、いきなり脱線しますが、最近仕事では「効率良良い働き方」「ワークスタイルの改革」というのがテーマになっておりまして、最近人事院のお偉いさんとも会話したんですが、日本人の働き方ってここ10年で確実に変わってきてると思うんですよね。より欧米型に近づいたというか。

少なくとも「男性正社員は長時間労働が当たり前である」から「プライベート時間を確保できないのはブラック企業である」と変わってきつつある。少なくとも僕が勤め始めた15年ぐらい前は男性が育児休暇とるなんてまだまだ珍しかったのが、今は同期も普通にとってますからねぇ。

さて、本題に戻りますと、最近Twitterで不動産クラスタの方々をフォローしまして、そこで必読書とあげられていたのが、

ニュータウンは黄昏れて (新潮文庫)

バブル期にニュータウンでマンションを高値づかみし、そのせいで色々な苦労をすることになった一家が主人公です。小説としても大変面白い。

やっぱり不動産購入は人生でもっとも高い買い物ですから、そこで失敗すると一生その重荷を背負うことになるという、とても売買に慎重になれる本です。「住宅ローンで無理しちゃいかんよね」というのが実際の購入検討者としてはTake Awayでしょうか。

さて、そうしてまず「心構え」をつくったところで、実際のマンション購入について、実践的なアドバイスを得られるのが、次の本です。

専門家は絶対に教えてくれない! 本当に役立つマンション購入術 (廣済堂新書)

これはのらえもんというブロガーの方が書かれた本なのですが、現代のマンション購入検討者にとって必要な情報がコンパクトにまとまっています。マンション購入を検討していた時に本を何冊か読んだのですが、こちらの新書が過不足なくて良いと思いますね。

ご本人は今人気の湾岸エリアのタワマン在住ということで、都内在住のそこらへんでんで検討されている方はまさに必読と言えるのではないでしょうか。

ちなみに、個人的にはそれこそ湾岸のタワマンの30年後はまさに今のニュータウンになるんじゃないの?という懸念が拭えませんが…。

どうなんでしょうね?郊外住宅と違って需要が減らなければ新規住人が入り続けるとは思うのですが。そういう意味では、湾岸はまだしも、武蔵小杉の高層マンションが人気なのはちょっと私の理解を超えてますね。

さて、最後に不動産営業をテーマにした小説。

狭小邸宅 (集英社文庫)

売れない不動産の営業マンが、社内のパワハラに耐えて成長していくストーリーです。不動産クラスタには受けてましたが、まぁ、内輪ネタですね。

正直私の会社も強烈な体育会系カルチャーを持ってますので、そういう意味ではニヤニヤしながら読みましたが、そうでなければあまり面白くないかも。

てな感じで、ご興味のある方は秋の読書にオススメです。

2015年5月14日木曜日

リーダーシップ考

「リーダーシップ」という概念は、欧米のエリート教育の中では中心的な位置にあるような印象を受けます。どこのビジネススクールでも、リーダーシップというのは必修授業の構成要素です。

翻って、少なくとも大学までの日本の高等教育ではその手の教育が為されたという記憶はありません。「欧米ではこう、日本ではこう」と過度に単純化することは戒めたいところですが、日本企業に務めた個人的な経験では、然るべき地位にいる方々がリーダーシップを一向に発揮せず、失望させられた経験が少なくないというのは、偽らざるところです。

こうした状況を踏まえ、日本人MBA卒業生の間では「欧米企業ではリーダー人材は抜擢され、早くからマネジメントの経験を積めるのに、日本企業ではそうしたことは行われない」というのが定番の嘆きであります。確かに、客観的な事実として日本の大企業では40歳ぐらいまで管理職になることはないので、こうした昇進の遅さが、リーダー育成にとってネガティブファクターであることは十分にありうる、と思います。

ただ、こうした「遅い昇進」は、日本企業の特徴である「新卒一括採用慣行」「ジョブセキュリティの高さ」と裏表の関係にあります。というのは、出世競争に負けた側を簡単にクビに出来ないので、昇進をなるべく遅らせて、相互に競わせるのが合理的な行動になるのです。ので、僕自身はMBA卒業生の嘆きには簡単に同調できないのですが。

いずれにせよ、日本型組織の運営において、最もボトルネックとなるのはこうした「リーダー人材の不足」であることは珍しくないだろう、というのが個人的な肌感覚です。

僕が最近考えているのは、比較的若いうちからリーダーとしての経験を積みたいのであれば、NPOなりの社外活動に積極的に関わるのがよいのではないか、ということです。

およそ仕事であれば、従業員は給与をもらう対価として「業務命令」に服する必要があります。もちろん気に入らない上司の仕事をサボタージュするというのは一般的なことですが、それとて限界があります。つまり、どんなダメなオジさんであっても、一定のポストに就けばある程度の権限をふるうことが可能です。

一方で、NPOのようなボランティア組織では、構成員がそうした義務を負っていません。組織がワークするかどうかは、かなりのところ属人的なリーダーシップにかかってきます。「お金や契約によらず人を動かさなければならない」というのは、いかにその趣旨に賛同して集まった人たちであれ、なかなか難しいことです。

構成員のモチベーションはなんなのか、どんなスキルを持っているのか、キャパシティはどの程度あるのか、信頼できる人材か。どういう言い方をしたらよいのか、プライドメンテナンスなども必要になってくるでしょう。原始共同体の政治というのは、こうした形で行われたのかもしれませんね。そうした場で、リーダーとして学べることは多いのではないかと思います。

もうひとつ重要なのは、「リーダーがいなければ、組織は動かない」ということを現実として理解できます。これは僕も震災のボランティアに行ったときに実感したのですが、「何かを震災被害者のサポートをしたい」という人が100人集まったところで、それだけでは実際に何もできないんですよね。「あなたはこれをやってください」というディレクションをする人がいなければ。

最後に、アメリカみたいにCEOが莫大な報酬を得るならともかく、一般的にはリーダーというのは割に合わない立場です。時間なのか、お金なのか、何らかの負担を引き受ける必要があります。日本人のメンタリティとしては「リーダーに憧れる」というのはあまりないかもしれませんが、一般的にはフォロワーの立場の方が楽なのは間違いありません。

もっとも、リーダーがそうした自己犠牲を払っているからこそ、構成員の尊敬を集め「この人についていこう」という本来的なリーダーシップが発生するものかもしれませんね。



2015年4月18日土曜日

書評:民主主義の条件

僕が敬愛してやまない(?)、友人でもある砂原先生の本です。


民主主義の条件

内容は主に政党及び選挙を中心に、制度設計がどのように個々のアクターのアクションに影響を及ぼすのか、についてわかりやすく書かれています。高校生や大学生の政治学の入門書としてよい本ではないでしょうか。

論の進め方も堅苦しいものではなく、

「だいたい人口10万人くらいの市でも1500票程度とれば当選できることになります。人口の1%程度ですから、たとえば市の商工会とか農協とか自治体とか、いくつかの団体をまとめれば難しくない数と言えます。 …どれだけひどい議員であっても、「選挙で落選させる」という脅しが効きにくくなります。」

といった具合です。

無党派の多さに現れているように、今の日本の政治状況に満足している国民はそれほど多くはないでしょう。ただ、その原因を紐解いた言説では、「政治家が昔に比べて小粒になった」「政治家は国民自身のレベルを反映したものだからだから、しょうがない」といった具合に、「国民一般の民度」に帰責させてしまうものが多いように思います。

「民度」が問題だとすれば、その解決は容易ではありません。せいぜい「学校教育を頑張ろう」ということぐらいしか、やれることはないのではないでしょうか。もちろん本当に民度が原因ということもあるかもしれませんが、率直に申し上げれば、そうした論評はあまり現実の状況の改善には役に立たないように思います。

本書では、制度を変えることによって、政治家が特殊な団体の利益代表となってしまう状況を変え、より国民の納得性が向上されるやり方がある、と主張しています。制度を変えるというのは具体的で実現可能な話であり、僕はとても生産的な提言だと思います。

組織人の立場から感想を述べると、これは大組織の中で意思決定に関与する人々にもインサイトを与えるのではないでしょうか。

およそ組織人であれば、時にはその組織の長であったとしても、自己の考えへの賛同者を集めなければ自らの望む事業はなしえません。その面倒なプロセスを経るからこそ、個人では為し得ない事業が可能になります。様々なインセンティブを持つ多数の関与者の支持を得るにはどうしたらよいのか、そうした視座を与えてくれるように思います。


最後に、Kindleで読めるはよいですね!整理しても整理しても、拙宅の兎小屋では本の保存場所に困りますので、全ての新刊がマルチプラットフォームで出版されることを切に願います。


P.S. この本には谷口氏がかっこいい書評を書かれています。

以前、ある研究会で聞いた「権力の過剰と希少」という話があった。法学者は国法の頂点たる憲法自体が権力制限規範であることからも明らかなように、いかにして過剰になりがちな権力を制限するかに注目するが、これに対して政治学者は権力はむしろ希少で、いかにしてそれを育むかに関心を持つ、というものである。

 本書はこの点、希少な資源としての権力(多数派形成、政党など)の育成を選挙という制度知の観点からじっくりと分かりやすく考察するもので、上記の意味での政治学の「王道」を行く。

2015年4月3日金曜日

新入社員研修

気づいてみれば、新入社員研修を行う年次になってました。


いやー、月日のたつのは早いものですね…と自分でも思うかなぁ、と考えていたのですが、そんな感慨もなく、普通に「講師」してきました。もっとインタラクティブにしたいとは思ったのですが、何分反応も薄く、単なる「座学」になってしまったのが反省点。数百人相手でも盛り上がるプレゼンをやられるようになるが、僕の次の目標でしょうか。

なお、最後に「講師」としてではなく、「会社の先輩」という個人的観点から以下のようなアドバイスをしたのですが、意図がうまく伝わったか。


・3年後になれば、皆さんのうちの1割は確実にこのグループにいない。

・人によっては「辞めたやつは裏切り者」という考え方の人たちもいるが、自分はそうは考えない。仕事とは、会社に対しては役務を提供し、報酬を得る労働契約である。

・したがって、報酬に不満がある、人間関係がうまくいかない、などの理由で辞めるのはかまわないと思うし、逆に会社から「あなたは必要ない」と言われる可能性もある。

・そもそも皆さんが所属する会社が将来存続しているかどうかの保証すらない。業績は安定しているが、将来はわからないし、合併などの選択肢も当然ありうる。

・とはいえ、「金の切れ目が縁の切れ目」とだけ考えていればよいかといえば、それは違うと思われる。自分も転職活動をしたことがあるが、その経験からもそう思う。

・この会社でなければできない仕事、この会社でなければ働けない人たち、この会社でなければ得られない誇り、そうしたものがあればこそ、皆さんは仕事をしていて充実感を得られると思う。

・それは社長が一人頑張るというという類の話ではなく、皆さんを含めて社員全員が貢献すべきことだと考えている。自分も常にそうした視点で仕事をし、この会社をよりよくしたいと考えている。

・同じ志を持つであろう皆さんと一緒に仕事をできる日を楽しみにしています。


一応前向きな話をしたつもりなんですが、ちょっと過激だったかなぁ。来年人事から「新入社員に辞めてもいいなんて話をするなんて、とんでもないやつだ。あいつは勘弁してくれ」って言わるかしら。とはいえ、キレイごとだけ言ってもしょうがないし。